若手海外派遣(東京大学・小山 雪乃丞さん)の報告を掲載しました
Slow-to-Fast地震学 若手研究者海外派遣報告
小山 雪乃丞
東京大学 地球惑星科学専攻
2025年10月5日から23日まで、研究および巡検・学会参加のため、アリゾナ州立大学、カリフォルニア州のサンタカタリナ島、およびテキサス州のサンアントニオに滞在させていただきました。
本滞在期間の前半では、アリゾナ州立大学のSecondary Ion Mass Spectrometry LabsにてRichard Hervig教授の元でSIMS(二次イオン質量分析法)を用いた分析を行いました。鉱物中の微量元素の定量分析が目的です。結果を地質温度圧力計に適用することで、岩石が変形を受けた温度圧力条件を推定できます。本研究は、深部スロー地震発生領域に相当する深度にて記録された変形構造を、岩石から選別する際にも有用です。
Richard Hervig教授とは昨年度から分析について打ち合わせを重ねていました。現地滞在に先んじて、岩石サンプルを円柱状の特殊なチップに加工し、表面研磨を施す技術を会得しました。1サンプルを郵送し、試験的な分析を行い、分析が問題なく行えることを確認したため、現地に赴いて分析技術を学ぶこととしました。現地では装置の立ち上げから終了まで、一通りの分析技術を教えていただき、実際に分析作業を約1週間かけて学習するという貴重な機会を頂きました。Hervig教授と共に分析結果をリアルタイムで解釈することができ、現地滞在の恩恵を最大限に享受することができました。また、学術的な雑談を数多く交わし、SIMSの内部構造や分析結果に影響を及ぼす因子など、分析機器に対する理解を深めるうえで貴重なお話をお伺いすることができました。分析は成功し、興味深い結果を得ることができました。現在は投稿論文を執筆中です。
アリゾナ州立大学での分析ののち、カリフォルニア州サンタカタリナ島で行われた野外巡検およびテキサス州サンアントニオで行われたGSA(米国地質学会)主催の学会に参加しました。サンタカタリナ島はCatalina Schistと呼ばれる変成岩体で有名です。Catalina Schistは青色片岩相から角閃岩相の変成作用を受けており、深部スロー地震発生領域に相当する深さまで沈み込んだ物質である可能性があります。本地域を詳細に観察されている先生方に引率され、露頭を観察し、その成因等を議論する機会に恵まれたことは極めて幸運でした。巡検の夜には関連研究を議題とした多様な議論が活発に交わされ、海外の研究者と交流する貴重な機会に恵まれました。テキサス州サンアントニオで開かれた学会では口頭発表を行いました。石英の変形温度推定に関する発表を行い、議論を通して海外の研究者に自身の研究を知っていただくことができました。
本滞在で得られた共同研究の機会や、国際的な関係を生かし、今後も研究を展開していく所存です。海外での研究経験は初めてでしたが、手厚いご支援により無事に遂行することができました。今回の海外派遣をご支援くださったSlow-to-Fast地震学関係者の皆さま、事務局の皆さまに心より感謝申し上げます。

SIMSで分析中のところを撮影される小山。