若手海外派遣(高知大学・細川貴弘さん)の報告を掲載しました
SF地震学 若手研究者海外派遣報告
細川貴弘
高知大学大学院総合人間自然科学研究科 博士課程1年
2024年10月1日から10月21日までの3週間、イタリアのフィレンツェ大学(University of Florence)と、ドイツのハレ大学(Martin Luther University Halle-Wittenberg)で在外研究を行う機会を頂きました。
フィレンツェ大学では、Paola Vannucchi教授、Jason P. Morgan博士と、同時期に滞在していた南方科技大学(SUS Tech)の博士学生のGuanzhi Wang氏のもとで、数値モデリング(LaCoDE)について学び、断層帯から地質学的に制約された値を数値モデルに反映させる方法について議論しました。今後はオンライン等で議論を続けていき、これまで行ってきた断層帯から地質学的に制約した応力を反映した数値モデリングを行い、断層帯のレオロジーについて検討していきたいと考えています。また滞在中には、イタリアのピオンビーノ(Piombino)沿岸に露出している、Ligurian unitsなどの露頭へ巡検に行きました。この巡検では、自分の研究対象としている鉱物脈などの変形構造を観察することができ、自分の研究手法をヨーロッパの複雑なテクトニクスの理解に用いることができないか検討しました。
ハレ大学では、Michael Stipp教授とRüdiger Kilian博士のもとで、四万十帯牟岐メランジュに発達する過去のプレート境界に相当する断層帯の薄片試料に対して、SEM – CL(走査型電子顕微鏡カソードルミネッセンス)分析を行いました。SEM-CLを用いることで、光学顕微鏡など他の手法では観察できない、石英や方解石などの微細構造(マイクロフラクチャー、鉱物の成長履歴など)のデータを得ることができました。今後、画像処理を行い、微細構造観察から断層岩の発達メカニズムについて検討したいと考えています。ハレ大学では、Geodynamics groupのセミナーで、牟岐メランジュでこれまで行ってきた研究について発表を行い、研究に用いている流体包有物についてアドバイスをいただくことができました。またドイツでは、発表後に拍手ではなく机を叩くといった、文化の違いを感じることができました。
今回の在外研究は、3週間の短い期間ではありましたが、新たに2つの共同研究を立ち上げることができました。今回得た経験を、今後の研究活動に活かしていければと思っています。最後になりますが、今回の在外研究を支援してくださったSF地震学関係者の方々、事務局の皆さまに深く御礼を申し上げます。