若手海外派遣(高知大学・内田泰蔵さん)の報告を掲載しました
高知大学大学院博士課程1年 内田泰蔵
2024年10月1日から10月18日までの3週間にわたり、フィレンツェ大学(イタリア)、Alpine Paleomagnetic Laboratory (ALP)(イタリア)、およびハレ大学(ドイツ)に研究滞在しました。この滞在の主な目的は、共同研究の打ち合わせおよび、断層岩に関する古地磁気/岩石磁気学的研究、微細構造研究の理解を深めることです。
フィレンツェ大学のChiara Montemagni博士およびPaola Vannucchi博士とは、断層岩中の磁性鉱物を用いた地質温度計および変形機構解析手法を確立するための共同研究を立ち上げ、今後の調査や研究手法について打ち合わせを行いました。Montemagni博士は、下部地殻から上部地殻において発達した断層岩を対象とした研究を行っており、今回の共同研究を通じて深部から浅部の断層運動の変遷に関する理解が深まることが期待されます。
ALPでは、トリノ大学(イタリア)のClaudio Robustelli Test博士と断層岩の古地磁気/岩石磁気学研究に関して意見交換を行い、貴重なアドバイスをいただきました。特に、断層岩のレオロジー特性が磁気ファブリックにどのように反映されるかについての議論が深まり、Robustelli博士は、異なる岩相やジオダイナミックセッティングで形成された断層岩の対比が重要であることを指摘されました。また、イタリアでの共同研究で使用可能な装置の説明を受け、測定の練習も行いました。
ハレ大学ではGeodynamics講座のゼミに参加し、”Fault magnetism”および自身の研究の発表を行い、研究者や学生と議論しました。同大学では、Michael Stipp博士とRüdiger Kilian博士から電子顕微鏡を用いた構造解析の基礎を学び、カソードルミネッセンス法を用いて四国四万十帯の白亜系付加体に発達する過去の地震断層の観察を行いました。この手法により、光学顕微鏡では観察できない鉱物の晶出(成長)履歴を発光波長に応じて観察することが可能で、変形岩の発達史を紐解く鍵になると考えています。
また、今回の滞在中には、イタリア・ピオンビーノでリグリア海沿岸に露出する中生代の堆積岩、変形岩、火成岩、またドイツ・ハレではザーレ川河岸に露出する古生代の火成岩および堆積岩の露頭へ巡検に行きました。この巡検は、今後の研究対象となるヨーロッパのテクトニクスを考察する上で、非常に有意義な機会となりました。
最後に、今回の海外派遣を支援してくださった、SF地震学関係者の皆様、事務局の皆様には深く御礼を申し上げます。