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若手海外

若手海外派遣(京都大学防災研究所・上田拓さん)の報告を掲載しました

SF地震学 若手研究者海外派遣報告

上田 拓
京都大学防災研究所 特定研究員(学振PD)

2024年5月18日から7月7日までグルノーブルアルプス大学で在外研究を行いましたので、ご報告いたします。
ホストのAnne Socquet教授とは昨年のSF地震学の研究集会で初めてお会いして、1on1オンライン議論イベントでヨーロッパでも地震活動と測地学的に推定されたひずみ速度を比較する研究が行われていることを聞いたのが今回の在外研究のきっかけとなりました。

グルノーブルでは「ヨーロッパのGNSSデータから推定された水平速度を用いてひずみ速度場を推定する研究」と「フランスのGNSS観測点分布と地殻変動を想定した合成データに対して複数のひずみ速度場推定手法を適用・比較するベンチマークテストへの参加」を行いました。私がこれまでの研究で日本のひずみ速度場を推定するのに使用していたOkazaki et al. (2021)の基底関数展開を用いた推定手法を実データ・合成データに適用することでこれらの研究に取り組みました。ヨーロッパは特に内陸部において日本と比べてひずみ速度が1~2桁小さく、テクトニクス環境が大きく異なります。また、ひずみ速度場推定において定常観測点より速度の推定誤差が大きいキャンペーン観測点も多く用いる必要があります。そのため、Okazaki et al. (2021)の手法でこれまで考慮されてこなかった観測点ごとの速度の推定誤差を新たに組み込むことで手法の改良を行いました。現在は、新手法を適用し、これまでの結果との比較・議論を進めており、今後も継続して共同研究を進めていく予定です。

滞在中は上記の研究の他に、Anne Socquet教授や学生・PDの前で日本でこれまで行ってきた研究についてセミナー発表をしました。また、グルノーブルアルプス大学に短期滞在されていたカリフォルニア大学バークレー校のRoland Burgmann教授と地震活動の季節変動性について議論したり、シャンベリーのサヴォワ・モンブラン大学に訪問してDavid Marsan教授と測地学的に推定される測地モーメントと地震活動から推定される地震モーメントとの関係性について議論したりするなど、複数の研究者と繋がりを持つことができました。

また、Anne Socquet教授が所属されている研究チーム内の研究集会にも参加しました。そこでは、チーム内での研究発表を聞くことができ、またSF地震学の研究集会でのbreakout sessionのような設定したテーマ(e.g, New perspective in geodesy, How to get permanent positions after phd/posdoc)について議論する機会がありました。

フランスは母国語が英語ではないことから、フランス人同士はフランス語で会話をするため、言語の壁を感じる場面も多くあり、日本で研究されている外国人研究者の気持ちを少し理解することができました。英語でのコミュニケーションも日本語でのコミュニケーションと比べると伝えたいことを伝えきれていないと感じる場面もあり、英語の学習も継続して行うことの重要性を実感しました。

最後になりますが、今回の在外研究をご支援いただいたSF地震学関係者の方々、事務局の皆様に心より感謝申し上げます。今回の経験を今後の研究に積極的に活かしていければと思っております。ありがとうございました。

Anne Socquet教授(右)と筆者

グルノーブルの街並み