若手海外派遣(鳴門教育大学・福地里菜さん)の報告を掲載しました
SF地震学 若手研究者海外派遣報告
福地里菜
鳴門教育大学 高度学校教育実践専攻
2025年7月24日から8月16日までの約3週間、エジンバラに位置するヘリオットワット大学にて在外研究を行う貴重な機会をいただきました(写真1・写真2)。本滞在は、堆積物の後背地解析を専門とするAmy Gough氏の受け入れによるもので、国際共同研究のさらなる発展を目的としたものです。
Gough氏とは、国際深海掘削計画(IODP)第405次航海において同じ研究グループで活動した経験があり、同所属の堆積学者Uisdean Nicholson氏も同航海に参加していました。今回の滞在では、航海中に議論してきた研究課題を引き継ぎ、ポストクルーズ研究を進めるための観察・解析や議論を重点的に行いました。特に、ロレーヌ大学のMarianne Conin氏、ダラム大学博士課程のRebecca Robertson氏、Geosciences BarcelonaのMaria Jose Jurado氏を交えたミニワークショップでは、堆積物に含まれる流体やガスの挙動、その起源としての粘土鉱物や玄武岩の役割に焦点を当て、断層帯における流体の分布と挙動について議論しました。滞在中には、私自身の鉱物量解析の成果を含め、陽イオン交換容量分析や酸素同位体を用いた残留ガス分析など、各参加研究者がポストクルーズ研究の進展状況を報告しました。相互にデータを突き合わせ、最新の知見に基づく活発な議論を行うことで、断層帯や周辺層序に関する理解をさらに深めるとともに、今後の共同研究および論文執筆の方向性をより明確にすることができました。
また、大学メンバーとの交流の一環としてスコットランド東部海岸の地質巡検に参加しました。Siccar Pointでは、シルル紀の垂直な砂岩層の上に傾斜したデボン紀の赤色砂岩が重なる「ハットンの不整合」を直接観察しました(写真3)。さらに、White SandsからBarns Ness灯台にかけては、石炭紀の石灰岩・砂岩・泥岩・石炭層や多数の化石を観察し、森林の繁茂から石炭層形成に至る典型的な層序発達を確認しました(写真4)。これらの観察をもとに、サイスミックデータやロギング・モデリングと掘削結果との地質対比についても議論が行われました。
短期間の滞在でしたが、直接の議論や野外観察を通じて研究を深めると同時に、論文執筆を進める時間も確保でき、新たな共同研究の端緒を得ることができました。今後は、本滞在で得た知見と国際的なネットワークを活かし、研究をさらに発展させていきたいと考えています。今回の在外研究をご支援くださったSF地震学関係者の皆さま、事務局の皆さまに心より感謝申し上げます。

写真1:Heriot-Watt Universityキャンパス入口

写真2:Heriot-Watt University大学校内の様子

写真3:Siccar point の不整合

写真4:White sands beachの石灰岩の中の窪み(樹根跡)