若手海外派遣(京都大学・澤山和貴さん)の報告を掲載しました
SF地震学 若手研究者海外派遣報告(Purdue大学)
澤山 和貴
京都大学理学研究科/助教
2023年5月28日~6月28日の約1ヶ月,アメリカPurdue大学(Rock Physics Research Group, Department of Physics)で在外研究を行う機会を頂きました。
ホストのPyrak-Nolte教授は,岩石の亀裂に伝播する地震波特性・流体流動特性を長年調べられている岩盤工学界の世界的権威で,近年も亀裂内流体流動と地震波特性(Fracture Stiffness)の間の普遍的なスケール則を解明する等実験・モデリングの両面で精力的に研究されている方です。2021年から共同研究のお誘いを頂いていたものの,当時はコロナ禍ということもあり, また2022年の冬に学会前後の訪問を希望した際には先方のご都合がありなかなか実現できていませんでした。今回の訪問は,兼ねてから相談していたX線CT撮像下でのコア透水試験中に浸透率・電気比抵抗・地震波速度を同時に測定する測定手法の開発が主な目的でした。従事している学生の準備状況の兼ね合いもあり,滞在中に本実験まで行うことができませんでしたが,センサー類の設置やシールのノウハウを教え,リークテストは無事クリアすることができました。今後はオンラインでやりとりをして共同研究を続ける予定です。また実験に加え,空き時間を使ってモデリングにも取り組みました。Pyrak-Nolte教授の提案した普遍的スケール則を浸透率と電気比抵抗の関係にも拡張するべく,私が開発してきた解析を試したり結果を議論したりと,大変有意義な滞在となりました。こちらも共同研究として議論を継続中です。
滞在中は,Pyrak-Nolte教授の主催するゼミに参加し,学生達とも議論を行いました。そのほか,Civil EngineeringのBobet教授と断層物性について,Physics DepartmentのNolte教授とは,別途進めている機械学習の研究について議論を行いました。またDepartment of Earth, Atmospheric, and Planetary SciencesのSchmitt教授(JGRのEditor)のラボにも訪問し,学生も交えて,地震波異方性に関する議論を行いました。
Purdue大学訪問の後は,亀裂媒体を対象とした研究者が多数集うU.S.Rock Mechanics Symposiumにも参加しました。自身の研究発表に加え,上記研究をベースとした活発な議論を行っただけでなく,多くの若手研究者と知り合うことができました。
今回の滞在は約1ヶ月しかありませんでしたが,共同研究として帰国後もモデリングや実験の議論を継続しています。また短い滞在でも,Pyrak-Nolte教授のパーコレーション解析手法を学ぶことができた(論文だけでは詳細がよくわからなかった)等,滞在研究を行わなければ得られない大変貴重な経験を得ることができました。この解析手法は,SF地震学の公募研究課題や今後の研究にも活かしていく予定です。 末筆となりましたが,有意義な海外渡航を支援してくださったSF地震学関係者の方々,事務局の皆さまに深く御礼申し上げます。