1. HOME
  2. NEWS & TOPICS
  3. 若手海外派遣(山口大学 国際総合科学部・浜橋真理さん)の報告を掲載しました
 
   

News & Topics

活動報告

若手海外派遣(山口大学 国際総合科学部・浜橋真理さん)の報告を掲載しました

SF地震学 若手研究者海外派遣報告(Earth Observatory of Singapore, Nanyang Technological University, Singapore)

浜橋 真理

山口大学 国際総合科学部/講師

2023年2月10日~24日の約2週間、シンガポール南洋理工大学(Nanyang Technological University)・Earth Observatory of Singaporeでの滞在研究を行う機会を頂きました。

Earth Observatory of Singaporeは、東南アジア周辺地域における地震・火山・津波・気候変動に関する教育研究に重きを置く、国際研究拠点の一つとして2008年に設立された研究所です。幅広い国々から研究者が集まった、国際色が豊かな研究所で、南洋理工大学のAsian School of the Environmentとの学部・大学院教育と連携し、学生もたくさんいる活発な環境です。Earth Observatory of Singaporeは私が2017年春から2020年春までの3年間、ポスドク研究員(Research Fellow)としてヒマラヤ前縁衝上断層帯の研究に携わった場所で、とても思い入れがある場所ですが、今回はまた新たな共同研究の立ち上げのために訪問をさせていただきました。
今回の訪問の目的は、1)国際深海科学掘削計画(IODP)第362次航海で掘削されたスンダ海溝・北部スマトラ島沖合の沈み込み堆積物の広域分布と前縁付加体の地質との対比を明らかにするために、この地域で取得された反射法地震探査のデータと前弧島の地質図との総合解析を行うこと、2)沈み込み帯に関する教材作成に使用する3D visualizationのプラットフォームの開発を行うことでした。これらの研究において、Shengji Wei博士、Aron Meltzner博士、Lujia Feng博士、Lauriane Chardot博士、Victoria Khoo氏らとスンダ海溝における地震分布の特性(スローリップイベントの分布、巨大地震発生帯のセグメンテーション)について、Sumatran GPS Array (SuGAr)観測網、スマトラ島北部の地震観測網、前弧島の地質図、マイクロアトールを用いた古地震履歴解析の知見に基づいて議論を行い、南海トラフや日本海溝との比較解析を行いました。また、私が2017年にEarth Observatory of Singapore在籍時に参加した広域物理探査(反射法地震探査、海底地形調査)のデータを再訪し、IODP掘削地点を結ぶ海溝域周辺の浅部・深部構造の検討を行いました。
2)では、Lauriane Chardot博士とVictoria Khoo氏との共同研究によって、ArcGISをはじめとする各種ソフトウェアを用いた3Dツールによる地質構造データの効果的な可視化、教育現場における教材ツールの作成に取り組みました。私は今年初めて教員の職に就いたのですが、自分の研究内容・分野をいかに効果的に授業に取り入れることができるかをじっくり追及することができ、とても良かったです。
滞在期間中は、Shengji Wei博士の研究室のゼミに参加し、研究発表や論文輪読を通して研究室のメンバーと交流することができました。Earth Observatory of Singaporeは、若手研究者もたくさんいて、いろいろな人と議論がしやすく、集中して研究を行うことができる環境でした。私がポスドクとして在籍していた頃とはメンバーがまた大きく入れ替わり、今回の滞在期間中に多くの研究者と新しく知り合うことができました。中でも、Mason Perry博士とはコスタリカ沖中米海溝における地震・地殻変動と付加体の構造について議論をすることができ、私が博士課程のときに取り組んだIODP第344次航海の掘削地点の近傍において最近展開されたGPS観測網のデータや新知見について紹介をしてくれました。
また、滞在期間中、私がこれまで取り組んだヒマラヤ前縁衝上断層帯の研究をさらに進展させるために、断層帯の最新活動年代の分析と堆積物の古環境分析を行うための掘削コア試料のサンプリングを行い、共同研究を継続することができました。

今回の滞在研究は、2週間の短い期間ではありましたが、新たな共同研究を立ち上げることができ、論文や科研費申請の執筆の下地を作ることができました。海外渡航を通して、視野を広げ、新しい着想を得るきっかけをつかむことができ、研究の楽しさを改めて実感しました。2020年、2021年はコロナ禍で海外渡航が困難な期間が続きましたが、現在はまた世界に旅立ちやすい環境に戻り、国際共同研究・交流を活発に行うことができることをうれしく思います(渡航先のシンガポールでは、コロナ前の生活とほぼ変わらない状態に戻っており、とても安心しました)。今回の海外渡航を通して、今後もさらに精進してまいりたいと思います。 末筆となりましたが、今回の海外渡航を支援してくださったSF地震学関係者の方々、事務局の皆さまには、深く御礼を申し上げます。

Shengji Wei研究室でのゼミの様子(筆者:左端)

Lauriane Chardot博士のグループメンバーと。(筆者:左から3人目)

Nanyang Technological Universityキャンパス風景1

雨の後に虹が見えたNanyang Technological Universityキャンパス風景

熱帯雨林が広がるキャンパス内で、真っ赤な太陽が沈む夕日